超即興(内橋和久+吉田達也)+坪口昌恭  高円寺Showboat





超即興(内橋和久+吉田達也)+坪口昌恭  高円寺Showboat 1月13日


開演後に、カバンに入れたはずのデジタルカメラが見当たらずに困った。代用に取り出したスマートフォンのカメラを使ったことがなかったため、操作するのに悪戦苦闘しているうちに前半が終了してしまった。


(画像は加工が施してあるような感じですが、いつものようにトリミング等含め何もせずにそのままアップロードしてあります。)


そのようなこともあって、自分なりの記憶の仕方がうまくいかなかった。けれども、ライブ演奏は十分楽しめた。




開場前に戸外に漏れてきた音とほぼ同じ演奏が、前半のステージで再現された。ある程度のコード進行の打ち合わせがあったのだと思う。


誤解があるような表現だが、内橋和久と吉田達也の二人だけの超即興の演奏とは趣の異なる構築美があると感じた。内橋和久の変幻自在の激しいコードカッティングが長く続く、言ってみれば激しいながらも禁欲的な展開はほとんど見られなかった。



インプロヴィゼイションの要素が強かった演奏のはずだが、私にはリハーサルを重ねたバンドのように聴こえた。坪口昌恭の参加に負うところが大きかったと思う。



坪口は、主に3つのシンセ・キーボード類を使っていた。珍しくメモしたところによると、KORG KRONOS、アナログシンセのARP ODYSSEY(オリジナル)、VIRUS TIという名の機材だった。鍵盤演奏では、KORG KRONOSを頻繁に使った。VIRSUS TIは、キーボード型と、デスクトップ型(キーボードがないコントローラー)があるらしい。坪口が使っていたのはデスクトップ型のように思えた。ボコーダーの音を出すときに、このVIRSUS TIを操作していたが、接続されているのかどうかは分からなかった。


いずれもビンテージらしい。私好みの楽器であるギターでさえ、ビンテージの真価を味わえるかどうかは微妙なところなので、いわんやシンセをやという感じだ。



坪口がKORG KRONOSでソロを取ることもあれば、内橋がソロを奏でることもあり、それぞれスリリングな展開だったのだが、この日の演奏でもっとも気になったのは、ハーモニーだった。といっても、採譜することはできないし、譜面にされたものを読んでも正直理解が難しいので、ただ単に私なりの「ハーモニーの感じ方」のようなものに過ぎない。





それぞれの奏者がソロをとる際のバッキングは別として、ギターとキーボードが同時に和音を奏でるとき、ふたつのハーモニーが同時に聴こえてくるような感じがした。専門用語では、ポリハーモニーと言われるようだが、残念ながら私の感じ方に理論的な裏付けはない。



ともかく、ふたつのハーモニーが聴こえてくるのだが、音楽的な意味ではなく、あくまで感覚として、釣り合いのとれた、まったく綻びのない調べだった。



坪口がボコーダーを使用したときには、アフロアメリカン的な調子が醸し出された。だが、坪口は、どこまでも果てしなく飛んでいくという具合にはならずに、さまざまなテイストをタイミング良く抑制的に提示していった。




この態度が、超即興のふたりの音に結合し昇華していく様子は、この日の最大の聴きどころだった。