不失者  高円寺HIGH





























































































11月9日 高円寺High 不失者 Fushitsusha
灰野敬二 : vo, g, etc. 森重靖宗 : b Ryosuke Kiyasu : ds


不失者をライブで観るのは実は初めてだった。記録媒体では何度も聴いているものの、ずっと機会を逃していた。



告知をみて、チェロ奏者として活躍している森重靖宗がエレキベースを演奏するということがとても気になった。



5月に高円寺Showboatでも不失者のライブがあったが、このメンバーだったのだろうか。




ライブの始まりは、Kiyasuの裏打ちのドラミングだった。


チェロの演奏に比べると、森重靖宗のエレキベースは、とても寡黙だった。


灰野敬二は、リズムセクションのふたりだけに演奏をさせたままでいることが度々あった。


Kiyasuは、独特のリズム感を持っているドラマーだと思う。オンビートからどんどん離れていこうとする。不思議なことに、バンドの音楽性が損なわれることは決してない。



そこに、森重靖宗のエレキベースが絶妙なタイミングで音数少なく色付けする。饒舌なチェロ演奏からはまったく想像ができない。あらゆる音を取り除いたうえで、ベース奏者として最後まで手渡すことができない、2音、あるいは3音だけが結果的に残ったという感じがする。


不穏な音の群れが会場を包み込み、やがて椿の花びらが宙を舞う。


風雪に耐えた大地に、雪解けの水が滴る。


少なくとも私にとって、灰野敬二の描いたこの日の音楽は、具象的な説明を拒絶した。



帰結はなく、永劫に展開していくかのような数々の情景だけが目の前に現れた。



異様なもののなかに潜んだ、耽美的な戦慄。



反芻することさえ拒む、轟音(ごうおん)にいざなわれた静謐。



灰野敬二はこれからどこに行くのであろうか。