山本精一 吉祥寺・スターパインズカフェ





山本精一 11月18日 吉祥寺・スターパインズカフェ

数年前のブログ記事で、「山本精一のライブを見るのは初めて」と記したような記憶がある。その後、再びライブを聴きに行こうとしたのだが、お目当てのライブの会場となった、渋谷時代のBarIssheeも、東高円寺UFO CLUBも、予約がいっぱいになってしまい聴きそびれていた。



そのようなわけで、今回が2回目のライブ体験となった。



超満員の会場は、きっと山本精一の熱心なファンたちで埋め尽くされていたのだと思う。


前日17日の同会場でのソロライブを経て、この日(11月18日)は、エレキベースの須藤俊明、ドラムスの山本達久のスリーピースバンドで歌をうたうという趣向のライブだった。



山本精一の歌ものは、記録媒体でも聴いたことがないため、文章で表現するのがとても難しい。それに加えて、即興インプロはまだしも、バンドサウンドや楽曲を表現する言葉に乏しい。



コアなファンは、(大先達の)Take’s Homepageをすでに読んでいると思う。


だから、私なりの感想文っぽい一文でも許容の範囲ではないかと考えている。




前半は、エレキギター一本を持ってひとりで歌をうたった。山本精一の歌声に慣れるまで長い時間は掛からなかった。



どう表現してよいのだろうか。



なつかしさを感じているうちに、トランス状態に陥ったり、そのうち、全身がマヒするような感じを覚えたり、聴き手の身体や精神の奥深くまで侵入してくるような唄だと思う。



媚薬を嗅いでいるような気分になるのは本当に不思議だ。



そう感じていると、一転してポップな曲を奏でたりする。なかでも、「ラプソディア」という曲は軽快で心地よかった。帰宅後にYoutubeでも聴いたが、ライブとは伴奏がまったく異なる(と感じた)ものの良いと思った。ライブでは、山本精一のギターのカッティングが、1980年代初期の山下達郎を想起させるような、日本的情緒にあふれたブラック音楽のたたずまいがある。



間奏のギターソロの場面は強烈な体験だった。茫洋とした海原を漂流しているうちに、路地裏に引きずり込まれ、ナイフで腹を刺されるような感覚に陥った。



ギターソロのときに、急にテンポが速くなる場面があったが、これに対応した、須藤・山本(達)のリズム隊はさすがだと思った。



純粋な歌い手で、こんなにギターが達者な人はいるのだろうか。



山本精一の多彩な才能の一面を堪能できた、ほんとうに幸運な夜だった。