ハチスノイト Super Deluxe
9月19日 ハチスノイト Super Deluxe
方々で評価の高い女性ボーカリストということを、ライブ会場の告知で知った。
そういうこともあり、ライブがとても楽しみだった。
声楽家のような発声が会場に響いた。
前衛的な発声を予想していたため、少なからず驚いた。
否、斬新かどうかは、表現スタイルに尽きるものではない。それは自明の理であろう。
途中でホーミーなどを交えたが、ハチスノイトのヴォーカルの真髄はクラシカルな発声にあると感じた。
ステージ脇のテーブルにPCが置かれていて、エンジニアらしき男性が、取り込んだ声を瞬時に編集する。声そのものをループさせて重ね合わせたり、スクラッチして音を細切れにしたりする。曲調は中央アジアから東欧あたりの音楽を想起させたが、ボーカリストの声を変換・編集したものなのか、あらかじめ用意したトラックだったのかはわからなかった。
そうした増幅・編集された音はさておき、流行りの歌ものにはない独特の「声」があった。
ロングドレスをまとった身のこなしが優美だった。静かな舞踏を眺めているような感覚にとらわれた。
素足にロングドレスというステージングは、とても印象的だった。
正面の姿を撮ろうと思って最前列からカメラを何度も向けたが、ハチスノイトは身を翻(ひるがえ)した。
1980年代に一世を風靡したポストモダンの文化的な解釈のひとつに、古典的な手法や技法、造作の借用があった。実際に、建築やデザインは無論のこと、その解釈にかなう音楽もあった。
ハチスノイトの音楽に、ポストモンダンな趣は感じられない。古典的な要素は、単なる借用にとどまることなく、「新しい何か」を付加することに成功していた。