菊地雅晃2 BASS QUARTET &現代音楽講座 荻窪ベルベットサン






































荻窪ベルベットサン

「まちゃあき先生の現代音楽講座《前回の続き・リングモジュレーターとかその他について》+菊地雅晃2BASS QUARTET」



松村拓海/フルート・バスフルート
菊地雅晃/コントラバス
千葉広樹/コントラバス
イトケン/ドラムス



前半は、現代音楽講座で、後半が2 Bass Quartetのライブだった。


ベルベットサンでの同イベントの開催は、これで5〜6回目とのことだ。


同イベントライブは、U-streamでライブ中継された。現代音楽講座のスピーカーは、菊地雅晃と千葉広樹だった。
ブーレーズクセナキスなど有名どころの話題のほかに、まったく聞いたことがない作曲家の話が出た。しかし、丁寧な解説付きで曲を流したので、抵抗感はなかった。

堅苦しい講義かと思ったら、総じて言うと、かなり砕けていて、馴染みやすかったというのが本当のところだ。







2 Bass Quartetについては、五反田ソニック二子玉川ライラ以来、ずっと聴いていなかったので、とても楽しみにしていた。


その間、購入したライブ録音を数枚聴いたが、生のライブ演奏は、それとはまったく別のものだった。



五反田ソニックでのデビューライブを聴いた時、完成度が高いアンサンブルだと思った。もちろん、ソロパートはあったが、グループとしてはすでに成熟しているように感じた。



室内楽的な趣を備えており、本当のところは別として楽譜に忠実に演奏しているように感じられた。スタンダード作品はともかく、私にとっては、オリジナルはすべて「コンポジション」という印象があった。

入念にリハーサルを重ねた賜物であるような感じがした。


当時、大谷能生が絶賛したそうだ。





この日のライブの曲目は
① Coincidence variation
② Tokyo radiation 16号
③ Atlas
④ Low concord

の4曲だった。



数年ぶりに聴いてみて気付いたのは、イトケン以外の演奏者のソロパートが多いことだった。譜面には書かれていない、即興の演奏をふんだんに聴くことができた。

ただ、全体を貫くアンサンブルの妙というものがあってはじめて、個々人の即興演奏が生きたのだと思う。



現代音楽的な要素と、ジャズ的な要素、イトケンの微妙なアクセントがついた極めて安定感のあるドラミング――。こうしたエッセンスが、計算通りに有機的に結び付いている。初期段階の完成された構築美から逸脱していく鍵となるのが、即興のパートだったと感じた。




Coincidence variationで菊地雅晃がソロを取っているときに、千葉広樹とイトケンの繰り出したリズムがダークで強靭だった。この曲では、そうした瞬間が、ところどころにあった。

グループ初期の段階では、2ベースは座って演奏していたと記憶する。こうしたところも、室内楽的なアンサンブルという印象を受けたが、今回のライブでは、二人のベーシストは立位だった。


松村拓海のフルートソロのときには、菊地雅晃コントラバスの胴体を叩いてリズムを取っていた。現代音楽の技法かと思ったら、バロック時代からのものだという。


Low concordのピチカートのテーマに続くアルコは即興なのか、譜面通りなのか判別が付かない。こうした感覚に囚われたのは、ライブ全体を通してのことだった。抽象的なフレーズに関しては、譜面や打ち合わせ通りの音なのか、即興なのか、私にとってはなかなか判別できないことが多かった。


リズムの複雑さは、このグループの特異性だ。イトケンがいとも容易く叩いているドラムスは、私の耳では本当についていくのが難しいリズムだ。この微妙なニュアンスは、イトケンならではのものだと思う。2つのベースは、ときに相互に絡みながら、ときにユニゾンを奏でながら、また、片方がウォーキングし、もう一方がソロを取るというコンビネーションも披露する。このはざまで、イトケンが間隙を縫うように感じさせながらも、中心を貫くリズムを刻んでいる。そこに松村のフルートが、華麗に切り込んでいく。



今後は、どのような発展を見せてくれるのだろうか。