菊地雅晃+藤原大輔Duo

2009年10月24日下北沢レディジェーン

1年経ちました。ですが、とても思い出に残っているライブです。

菊地雅晃は、ライブで何度も聴いていますが、藤原大輔は初めてでした。

藤原大輔については、閉店してしまった渋谷のHMVで、phatなどを試聴したのですが、正直言ってインパクトがありませんでした。もちろん試聴器などでは、音楽の良さが伝わらないのは分かっていますが。

そういうわけで、この日のライブもさほど期待していたわけではないのです。菊地雅晃のベースが聴きたいという単純な理由が動機だったわけです。






演奏が始まって、とても驚きました。
テナーの響き。
小手先の技術に驚くには鈍感になっている、私の耳に入り込んでくる音の塊り。

バークリー卒のインテリ臭や、リディアンクロマティック論者であることから受ける難渋さなど、彼に対して抱いていた先入観が払拭されました。

朗々とした、嬉々とした、切々とした、そんな音が私の心に入り込んでくる。胸が弾むような旋律。

特に、weaver of dreamsで聴かせた演奏は白眉でした。

もとから綺麗な曲を、さらに綺麗に演奏するのは実は難しい。

ですが、藤原大輔のテナーと菊地雅晃のベース&エレクトロニクスは天空を突き抜けていった。

スタンダードの演奏をエディットしたり、スタンダードにエレクトロニクスを加えてみたりする試みは何度も聴いており、そういった音楽には正直なところ、新鮮味が感じられなくなっていた時でした。





背反の音楽。造反の音楽。反逆の音楽。統一の音楽。

スタンダードの楽曲は、テナーサックスとウッドベースを軸に、エレクトロニクスが融け合い、ひとつになりました。

どの要素も、相反しながらも、引き寄せあい、ひとつになり、天に昇っていった。



菊地雅晃が自主制作しているCDのシリーズでリリースされていないのが悔やまれます。


注:写真は当日のものではありません。菊地雅晃が主宰している2ベースカルテットのデビューライブ時の写真です。