勝井祐二 ルイ・リロイ 石原雄治 千駄木・BarIshee
勝井祐二(Vln)
ルイ・リロイ(g)
石原雄治(ds)
5月18日
千駄木・BarIshee
晩春のころ、渋谷店から数えて10周年を迎えたBarIsheeに行って来た。
渋谷の時代から何度か訪れているのだが、何と言っても居心地が良い場所だと感じる。
創業以来、興味深いプログラムを次から次へと発表しており、毎回聴きに行けないのが惜しいくらいの充実ぶりだ。
この日は、本当に何年か振りに聴く勝井祐二、それに一部の層からは圧倒的な支持を得ているnapolliなどで活躍するルイ・リロイに、石原雄治が絡んだトリオのライブだった。
ヴァイオリニストの勝井祐二を聴くのが久しぶりだが、ライブでヴァイオリンの演奏を聴くのも本当に何年振りだろうか。以前、江古田のフライングティーポットで勝井祐二のお弟子さんの演奏を聴いたことがあって以来だったと思う。
私のかつての音楽試聴体験の99%がジャズだったため、じっくりとヴァイオリンを聴くという習慣がないことが大きく影響しているのではないかと考えている。
最近では、Leonid Koganなどの偉大なヴァイオリニストの音楽を聴いて、素直にすごいなあと感じられるようになった。個人的には、大きな進歩だと思う。
このトリオは今回で4回目だったそうだ。いずれもBarIsheeでの演奏だったと思う。そうすると試聴体験した人数はおそらく50人はいないのだはないか。
嘆かわしいというよりも、貴重な希少金属を手に入れたように感じられるのは皮肉なことだ。
ともかく、このトリオの演奏は本当に素晴らしかった。
繊細さも、壮大さも備えている。オーケストラのような厚みのある音に、ただ驚く。
リーダーらしきリーダーはいないのだが、やはり勝井祐二が中心的な役割を担っていた。勝井祐二の演奏技術の素晴らしさは言うまでもなく、なんと言うのだろうか、この人が放っているエネルギーがライブ会場を覆うその光景は圧巻だった。
楽器から放たれる音が、音楽家が放つエネルギーと一体化して、観衆に迫ってくる。稀有な体験だったと思う。
初めて聴いたルイ・リロイは、良い意味で予想外の演奏を披露してくれた。フィンガリングが独特で、私があまり聴いたことがない音を選んでいた。前半部分の、いくぶん籠ったように聴こえる音色も味があった。勝手な先入観も手伝い、当初は爆音ノイズを予想していた。Youtube等では聴いたことがなかったため、実際の音はとても繊細だと思った。味わいのある即興演奏だった。
石原雄治は、抑え気味だけれども、要所要所を付いてくるようなドラミングだった。
BarIsheeにおいて直近で聴いた、Newtrionのパワードラミングとは一線を画したものだった。
このメンバーで江古田のフライングティーポットで9月11日にライブをすると記憶している。時間が合えばまた聴きに行きたいと思う。
パレーズギャラリー Parades Gallery
長野県松本市を1年ぶりに訪れた。
松本市の風土や文化が気に入っていて、何度も小旅行をしている。
私の知る限りでは、1990年代までは、城下町としての特質を活かした碁盤の目の町並みに、民芸運動の中心人物となった池田三四郎の松本民芸のプロダクトが方々に色を添えながら、ちきり屋などの民芸品店が存在感を示しいていた。それに古本屋や喫茶店(カフェではない)、洋食屋(レストランではない)などの飲食店が点在し、良い意味で伝統的な色合いが濃い土地柄だった。
池田三四郎は、日本民芸館の3代目館長を推挙するに当たって、プロダクトデザイナーだった柳宗理のモダンな創作活動に反発する重鎮たちが、柳宗理の館長就任を快く思わず、これを阻止する構えを見せた時に、大阪の大立者とともに、柳宗理の就任を成功させたという。
プロダクトデザイナーの深澤直人が館長を務める今では、そんな話はとても想像する余地がない。
松本市立美術館で行われていた、草間彌生の展覧会に行ってみた。
静岡県立美術館収蔵の50年代のインフィニティネットペインティングは良かった。
1935年の素描がとても印象的だった。
草間彌生5歳のときの作品で、この時から、すでにドット(水玉)が全体を覆っていることに驚いた。
それはともかく、
最近では、どちらかというと町の外れなどに、若い文化が芽生えてきているようだ。
数年前にフリーペーパーでその存在を知って、何度か訪れたが、そのたびに閉廊していたギャラリーがあった。
今回も開いてはいないだろうと期待もせずに何の気なしで訪れたところ、オープンしていた。
躊躇することなく、扉を開けた。
渡辺明日香と、Pauline Gueriniの2人展「VIVID」という
催しが行われていた。
鮮やかな色彩と、色と色が混じり合う、ちょうどの塩梅がとてもよく表現されていた。
グラフィカルな造形美と抽象表現がうまく融合したような感覚だと思う。
オーナーは気軽に対応してくれた。
聞けば、年代物のリソグラフ(日本のメーカーのデジタル印刷機)で制作された作品群という。
ビンテージのリソグラフが、ヨーロッパやアメリカのアーティストの一部でブームになっており、この印刷機を使って制作を行う人たちが急増しているとの話しを聞くことができた。
作者のひとりである、渡辺明日香はFUJIROCK FESTIVALなどに作品を提供しているそうだ。
オーナー自身は、カメラマンとして活動しながら、ギャラリーを運営している。
オーナーが好きな写真家は、植田正治。
最近では、ソール・ライターの展覧会に行き感銘を受けたという。(サンフランシスコ近代美術館開催だったと記憶しているが)ロバート・フランクの展覧会も見に行ったそうだ。
暗室での作業の喜びや苦労話もしてくれて勉強になった。
語り口が情熱的で引き込まれた。
ギャラリー周辺は、若い文化が根付いており、若いとは言えない私でも楽しめた。
また訪れたいと思う。
お知らせ
来年早々にも、国分寺の名曲喫茶「でんえん」で絵を飾らせてもらうことになりました。
といっても、私が描いたものではなく、自身で所有している絵画です。
コンテンポラリーアートではなく、洋画やデッサン類を飾ってもらいます。
美術年鑑に掲載されたことがある物故画家の作品もありますが、それは一部です。
プロの画家が大学院時代に描いたデッサンや、美大を出て絵を描き続けている方が描いた作品、それに井の頭公園で露天商と隣り合わせで作品を出品していた 学校を出たばかりの、現プロカメラマンの写真など、そんな思い入れのある作品の数々を飾らせてもらいます。
井の頭公園といえば、日曜の露天がまだ許されていたころ、ものすごい写真を展示している写真家がいたので、いろいろ聞いたら、有名写真家のゴーストをしているとのことでした。(その方の作品は飾らないことにします)
話がそれましたが、でんえん、高円寺「ルネッサンス」、阿佐ヶ谷「ヴィオロン」の3店同時開催で、中野「クラシック」のオーナー、故・美作七朗さんの絵画店が開かれています。ことし3月までの会期だったのですが、ことしいっぱいになったそうです(でんえん、ヴィオロンで聞いた話ですが、ルネッサンスはどうか分からないです)。
ペーター・ブロッツマン、ヘザー・リー、灰野敬二 西麻布・スーパーデラックス
2018年5月2日 西麻布・スーパーデラックス
ペーター・ブロッツマン(サックス)
ヘザー・リー(ペダルスチールギター)
灰野敬二
組み合わせ
灰野敬二 × ペーター・ブロッツマン
灰野敬二 × ヘザー・リー
ペーター・ブロッツマン × ヘザー・リー × 灰野敬二
ヘザー・リーのことをまったく知らずに行ったら、とても良いライブだった。
ブロッツマンと灰野敬二にペダルスチールギターというのは、果たして合うのだろうかと思っていた。
杞憂に終わった。
とりわけ、灰野敬二のギターとの相性は抜群だったと思う。同じではないが、親和性のある音色の二つのギターが、重なり合った。
ヘザー・リーの演奏は、ひとつのフレーズに徹底して執着する。それがいつの間にか、ひとつの音、ふたつの音が変わって行く。
この変化が聴衆の耳に与える幻は、大きなものだったと思う。
ブロッツマンとのマッチングも同様に良かった。
百戦錬磨の即興の闘志たちに、これほどの影響を与えるのは並大抵の音楽家ではない証拠だと思う。
物販で購入した、ヘザー・リーとペーター・ブロッツマンのCDをかけたら、そばに家族がいることに気付いた。
「嫌でしょう。止めようか」と尋ねたところ、家族は「止めないで良い」と答えた。
「なぜ」と問うと、「メロディーがあるから」と言った。
私はとても驚いた。
「レイヤーズ・オブ・ネイチャー その線を超えて」セゾン現代美術館
長野県軽井沢のセゾン現代美術館でサム・フランシス、フランシス真悟、クリスチャン・アヴァの作品の企画展示が行われている。
コレクション展示はのぞいた、この企画展ゾーンのみ撮影が許可されている(フラッシュ、三脚は不可)。
セゾン美術館の歴史始まって以来の出来事という。
スロープを上ったところには、ここ何年もマークロスコの作品が鎮座していたはずだが、この日はサム・フランシスの作品が飾られていた。
上演時間に合えば、大掛かりな機械作品(1982年)が奏でる5分ほどの音楽を楽しめる(ニキ・ド・サンファルのパートナーだった、ジャン・ティンゲリーの作品)。
隣の市にある実母の生家に行く途中に毎年ふらっと立ち寄っているが、軽井沢の華々しさからは想像できないほど、静かな立地にある。
te_ri 結成10周年&ニューアルバム「kasugai low gravity」発売記念ライブ 海藻姉妹 原田仁+山本精一
1月20日、te_ri 結成10周年&ニューアルバム「kasugai low gravity」発売記念ライブが渋谷サラヴァ東京で開催された。
初めて行く会場だったが、とても良い雰囲気があった。
惜しいことに来年閉店するそうだ。
村上巨樹(g)と片山貴志(dr)のデュオバンドのte_riは、結成10周年となっているが、実際の結成は11年前となるそうだ。
村上巨樹が現在、ミャンマー音楽のエキスパートとして精力的に活躍しているのを知っている方は多いと思う。
2010年のことだったと思う。代官山の晴れたらでライブを観た。
そして、ファーストCDを持っているだけなので、このブログでte_riの10周年記念を祝うには心もとない。
昔からのファンの方々が多く詰め掛けていたので、心苦しいものがある。
村上巨樹と出会ったのは、te_ri結成前、高円寺の無力無善寺で開かれた、konrinzaiというイベントを訪れた時のことだった。konrinzaiは、村上巨樹が不定期で開催していた音楽イベントで、この時はすでに何回目かを数えていた。
弘中聡、弘中豪の「Gegegegeカルテット」、柿本論理ほかの「ねむり」、麓健一、徳久ウイリアム、康勝栄らが集った。
まさに新進気鋭の集いだった。
村上巨樹は、この時からすでに、優れたオーガナイザーであり、プロデューサーだった。
2006年か2007年だったか、よく覚えていないが、彼の周りには多くの仲間が集っていた。
そのあとだったか、konrinzaiは、江古田のフライングティーポットで多く行われるようになり、何度か聴きに行った。
そういうことなので、10周年を祝うイベントの仲間入りをさせてもらうことにしたい。
最初は、海藻姉妹というグループが演奏した。
ライティングが反射し過ぎて写真がうまく撮れなかったので1枚だけの掲載となった。
ピアノ等、サックス、サックスの3ピース編成。
すべて楽曲だったが、スリリングでとても楽しめた。
メディアでも多く取り上げられていて、有名なグループということだ。
原田仁 + 山本精一
原田仁は、ミキサーと思われるもので、四つ打ちやノイズをメインに繰り出した。
そこにマイクに密着させてヴォイスを発する。
それだけで成立する音楽だが、そこに山本精一が絡んでいく。
バッキングに徹するかと思うと前に出て行く。これが交互に繰り返されたり、同時に進行したりする。
かなり緊張を強いる展開だったが、聴き終わったあとは充実感が残った。
他にも同じような音楽活動をしているのだろうとは思うが、四つ打ちに絡んで行く山本精一を見るのは初めてだった。
とても興味深い光景だった。
te_ri
片山貴志(ds)、村上巨樹(g)
前回、といっても2010年なので、どういうふうに比べて言って良いものか迷うが
思ったところを書いてみたいと思う。
コードカッティングに重きを置かずに、難度の高いアルペジオを多く用いていた。
どの曲の所要時間も短く、緩急が付いており、「もう少し聴きたかった」という思いを持つ暇もなく
突然のエンディングが訪れるという感じだった。
息はぴったりと合っている。
ツーピースだけれども、とても厚みがある構成だ。
曲名は忘れたが、都会的な曲調のものもあり、レパートリーの多彩さでも聴かせるものがあった。
村上巨樹が岩手、片山貴志が岡山に、それぞれ在住している。
モチベーションを保ったり、リハーサルの機会を見つけたりと、
いろいろと見えない苦労があるのかとは思うが、
これからも良い音楽を提供してください。
20周年記念前には、必ず、再びライブを観に行きたいと思います。
RUINS 小岩bushbash 2017年8月13日
RUINS( 吉田達也 増田隆一)
昨年の5月から今年の1月にかけて体を壊してしまい
ライブにはほとんど行かないまま過ごした。
暑い日だった。
どうしてもRUINSを聴きたかったので、この日は、這うようにして
小岩のbushbashまで行った。
対バンがあったのだが、体が持たなかったので聴くことができなかった。
この日に訪れたお客さんにとってRUINSはやはり特別な存在なのだと思う。
私にとっては、とても良い日となった。